3月のライオン meets BUMP OF CHICKEN

3月のライオン meets BUMP OF CHICKEN

スペシャルクロストーク後編

スペシャルクロストーク後編

2014年11月28日(金)発売の「ヤングアニマル」23号から続く、スペシャルクロストーク。
ここからはお互いの作品について、じっくり語り合っていきます。前編を未読の方はぜひ書店にお急ぎください!

――まずはお互いの今回のコラボで作った作品を聴いたり読んだりしての感想をお聞かせください。
羽海野先生からお願いできますか?

羽海野
はい。最初、歌詞だけを見たんです。最初の2行だけでライオンのことが語られているのがすごいなって思って。「気づいたらもう嵐の中で帰り道がわからなくなっていた」っていうのは、本当にそういう場所にいる男の子の話だと思って描いてきたので、まずそれでびっくりしまして。2行で表せちゃうんだと思って。
藤原
そんなですか?
羽海野
でも、自分も仕事を始めて、すごい仕事が増えて「気づいたら嵐の中にいて、帰り道がわからなくなった」と思いながら、マンガも描いていたので、この歌をいただいた時にすごく嬉しくなりました。この歌詞を見て。
藤原
ありがとうございます。わー、すげぇ嬉しい。
羽海野
スピンオフについては、最初粗く作ってあったストーリーがあったんですけども、歌詞を読んで、曲を聴いて、私のイメージが膨らんで、だんだんお話が曲のほうに寄っていって、物語を描き直したんです。こういうやりとりをしながらマンガを描くことがなかったので、すごい新鮮で。もらったもので膨らませてもらって、話の筋も変わって、っていうのがとても楽しい体験でした。
藤原
ありがとうございます。

――じゃあ、この曲を聴く以前からスピンオフのあらすじはあったけれども、最終的に「ファイター」という同じタイトルになったということなんですね。

羽海野
はい。あと、もう1回BUMPさんのどの曲で自分がどう育ててもらってきたのかなっていう総集編みたいにしたい気持ちも、あの読切にはありました。だけど、ただ歌詞などをはっきりと描き過ぎてしまっちゃいけないとも思ったので、もらったものの気持ちだけを散りばめて、パズルみたいにしていって作りました。歌詞で「その声は流れ星のように次々に耳に飛び込んでは光って」と「魚のように集まりだして」っていうのがあったので、本当に〆切ギリギリの2日前くらいに、マンガの最後のほうでも、登場人物全部出そうと思って描き直したところもあります。
あぁ、出てきますね。
直井
ここ、すごい好き。
羽海野
声が集まってきて、零君の胸もあったまりだして、のところは、今まで戦ってきたみんなも“ファイター”なのだから、戦った人みんな出さないと、と思って。じゃあここで、みんな出すぞって。
直井
かっけー。
増川
超カッコいいね。
羽海野
なんか、マンガの担当さんが読んだ後、「最終回みたい」って言いましたけど。
一同
(爆笑)
羽海野
「そうだ、タイトルが『ファイター』だから、ファイターは戦う相手もいるものだ」って思って、マンガを描き直していって。そのうち、だんだん自分のなかでもつじつまが合ってきて、楽しかったです。
藤原
ありがとうございます。

――じゃあ、逆に今度はBUMPのメンバーが羽海野先生の「ファイター」を読んだ感想を聞いていきたいです。

藤原
はい。なんか、この状況(スピンオフ序盤の、クラス内で孤立する幼少期の零)が持つ玄人感というかね。
一同
(爆笑)
羽海野
ひとりぼっち玄人感が。
藤原
で、最初「そうだよな、余裕なんだな」って。「その状況に対しては、対処法がしっかりできてんだな」って。
羽海野
玄人感……。
増川
慣れっこなんですね。こういう状況自体に。
藤原
最初に泣いたのは、このクリアファイルを敷いたシーン。
増川
俺もそうです。
羽海野
ありがとうございます。
藤原
あぁ、そっか、よかったよかった。お尻濡れなかった。で、その後お弁当を守れないというか、お弁当を守ってあげたかった。やべ、泣けてきた。これ、とんでもないシチュエーションですよね。遠足でひとり、茂みの陰で、お尻が濡れないようにクリアファイルを敷いて、まぁ、なんだ、連れって言ったらそこにいた蟻ぐらいで。そんな状況でも、やっぱりお腹が減るんですよ。お腹が減るから食べるんですよ。
羽海野
そうなんですよ。お腹は減ってるんですよ。
藤原
食べたっていいじゃないですか、ねぇ。
羽海野
蟻にもおすそ分けをして。
藤原
で、詰め将棋を解くっていうね。遠足で、食べ物を蟻にあげて、詰め将棋をひとりで解いてる子供ですよ。つつじの陰で。
羽海野
つつじの中で。
藤原
なんだろうね。まぁ、だからとにかく僕は、「とんでもねぇな」って思ったんですよ。よくこの子、ここまで大きくなってくれたな、っていうか。
羽海野
ありがとうございます。
藤原
桐山君がね。零君が。零君のことを好きな人は超好きじゃないですか。マンガに出てくる人達って。零君のこと、超買ってるじゃないですか。なんだろう。うまく言えないなぁ。すっげーうまく言えないなぁ。「僕が変わったわけではない」っていうのはホントそうだなって思って。劇中にそういう、モノローグっていうんですか?
羽海野
はい。
藤原
それがあるんですけど、ホントそうだなぁと思って。そりゃね、人間だから身体も心も成長はしてると思うんですけど、零君は零君のままきっと一生懸命生きてきたんでしょうね。だから、すっごいごっついお話でしたね。読切だからこういうスタイルなのかな? 自分の領分にたとえて話すんだったら、歌詞みたいだなってちょっと思いました。時間軸があって、零君っていう基準があって、それとこの空席であることと、自分の目の前に人がいるってこと。なんかその基準を元にしてこう、場面だったり、なんだろうな。すごい心情が伝わってくるっていうか。その、自分が感じてるんだろうなっていう。俺の心が動かされてるんだなぁっていう感じがしましたね。ホント、だからなんか、あんまり言葉に直したくなかったし、直そうと思ってもたぶん難しいことだし、読んだ後は「やべーなぁ」「はぁ(感嘆の溜息)」みたいな感じで。最初に鉛筆描きみたいな原稿を読ませていただいた時も、なんか、それだけで本当に、あの……なんでしょうね。……これ全然話ズレちゃうんですけど、あれはネームって言うんですか?
羽海野
はい。
藤原
ネームなんてめったに見られるもんじゃないから。その、ネームの段階ですごいんだなって思って。熱量っていうか、ものすごい情報量が、すごい凝縮されて、昇華されて、ひとつのセリフができてるんだなっていうのがすごい伝わってきて。たとえば、最初の「僕の隣はいつも空席だ」って情報から、もう読んでて、ぐわんぐわんしますよね、気持ちがね。また、途中で出てくるこの担任の先生の「ダメだぞ」「こーら」とか……。
羽海野
辛い。辛いですよね。
藤原
「どうして桐山君を仲間外れにするのか?」とか。
羽海野
学級会の議題にされても、どうしたらいいかわかりませんよね。
藤原
強烈過ぎますよね。
羽海野
強烈ですね。黒板に字で書かれるって強烈。
藤原
なんだろう。俺、全然まとまんないな。

――語りつくせないですよね。

藤原
とにかく、それが、今の「3月のライオン」の中の零君の場面につながっていっているわけじゃないですか。零君は頑張ろうと思って、これをやっているわけじゃないのかもしれないですけど、すごい一生懸命、頑張って生きてきたんだなって思わざるを得ないですよね。どうなんだろうこれは、僕の言っていることは薄っぺらい気もするんですけど、でも、本当にものすごくそういうものを感じて。
羽海野
「よく、ここまで育ってきてくれた」って言ってもらっただけでも、すっごい嬉しいです。
藤原
俺がこのクリアファイルになりたいですもんね。
一同
(爆笑)
羽海野
お尻を濡らさないでくださるんですね。
藤原
「いいぜ」って。
羽海野
ありがとうございます。

――じゃあ、ヒロ君の感想を聞かせてください。

増川
はい。
藤原
難しくない? こうやって感想言うのは。
増川
そうなんだけど。僕は、「やめてあげて」「もう、やめてあげて」って。「こんな、やめてあげて」ってまず最初の1ページ目で思いました。
羽海野
ありがとうございます。
増川
もうこれ以上は。コマに入りきらずに飛び出している台詞とかホント厳しくて、的確に零君のヒットポイントが削られていく。でもまぁ、それすらもさっき言ってた玄人感というか、なんて言うんでしょうかね。徐々に回復する、自分の作用が働いてるんでしょうけど、この中で零君は。それがすごい切な過ぎて。でも、さっき僕は思ったんですけど。こういう瞬間……。ずっとこうじゃなかったにしても、僕らだってこういう瞬間もありますし。そりゃ、ふとした瞬間にそうなる時もあるじゃないですか、子供時代は。だから、誰しもにこういう経験があるんじゃないかなと。かつ、僕は読んでいて思ったんですけど、零くんを攻める男の子になっている瞬間もたぶん無意識にあるんですよね。
藤原
いじめる側にね。
増川
いじめた意識もないと思うよ。
羽海野
気づかないで。
増川
自分も気づかず相手にそういうことを思わせちゃった時もあっただろうし。だから、本当にいろんなことをね、羽海野先生のマンガを読むと考える。この担任の先生になっちゃいけないなって思うんですけど、でも、この先生、絶対善意しかないはずなんです。
羽海野
そうなんです。
増川
みんなの輪をすごく重んじてるし。
藤原
「よし」って思ってるからね。
羽海野
ひとりぼっちの子がいる。「よし、何とかしてやるか☆」って思ってくれて、励まそうとしてくれた、おどけてくれたんだと思うんです。
増川
そうですよね。そして、この先生はたぶんこの日の夜、美味しいビールを飲むんですよ。今日も頑張ったなって。そこにはやましい気持ちはなく。で、その後半、最後のページに向かっての下りですよね。一緒の方向を向く仲間というか。仲間じゃないんでしょうけど、でも、こういう人達、この相手の、目の前に座ってくれた人達っていうのは、余計なことは排した次元にいる人達だから、良かったなって。今の零君が作られてすごい良かったなって僕も思うし、そして、そういう人達に出会えて良かった。あと、そのシーンを読んで、自分でも思うんですけど、僕らもまぁ、同じ目的というか、こういう感じの人達に囲まれているなと思っていて。そして、マンガでは「自分が変わっていったわけでもない」と書いてあるんですけど、やっぱり、僕らメンバーは元々仲良しで、友達だったんですけど、それだけではやっぱりやっていけない時もあるし……そういうことをすごく思い出しました。そういう瞬間の連続で僕らも生きていて、やっぱり楽しいだけでは……楽しいってことは大前提としてあるし、それも必要なんですけど。それだけじゃない段階に来ていて。そういう僕からしたら、子供時代の零君も今の零君も、すごいカッコいいなって思うんです。零君だけじゃなくて、登場人物全員。棋士の人達も、カッコいいけど、別に街を歩いていてきゃーきゃー言われるカッコよさではないじゃないですか。役者でもなければ、モデルでもないけど、そのカッコよさ……羽海野先生は、なんでそれがこんなにわかるんだろうな。
羽海野
なんか、それ嬉しいです。すごく。ありがとうございます。
増川
(遠足中にひとりで詰め将棋をする零を指して)この零君もちっちゃい頃から、超カッコいいんです。ひとりでここに座って、自分の楽しさを知ってて。それを黙々とするっていう。なんかもうまとまらないですけど。良かったなって。零くんの今があって。
羽海野
ありがとうございます。
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